薬は大きく分けて、現在の状態をコントロールするために毎日服用が必要なものと、症状があるときにだけ服用すればよいものの、二種類があります。
前者には血圧や糖尿病などの薬、後者には風邪薬や胃薬などがあたります。
後者の場合、症状がよくなった段階で服用を止めることが大きな問題を引き起こすことは、普通はありません。
しかし、前者の「毎日服用が必要とされる薬」についてはすでに長期に服用している場合も多く、体のほうもその薬を受け入れることがある程度当然となっている、いわば「体質」となっているものです。
したがってそのような場合に勝手に薬の服用を中止すると、かえって血圧や血糖値の上昇など病状の悪化を招いてしまうこともありますので、注意が必要です。
もちろん症状の改善がみられた折に、服用の量や回数を減らしたりするほうがよい場合もありますので、そのようなときは自己判断を避け、医師と相談して行う必要があります。
もし何らかの理由で薬が服用できなかったり、あるいは意図的にしなかった場合も、主治医に正しくその旨を伝えることが必要です。
また、服用しなかったことによってなにかしら普段と違う症状がでた場合も、すぐに医師に相談するようにしましょう。
さて薬・医薬品・漢方薬の服用に際して、一般知識として知っておきたいポイントについて、いくつか述べます。
まず、処方された薬は一日の服用回数と服用時期が定められていますね。
これは薬の効果を最大限に引き出すこと以外に、もうひとつの理由があります。
それは、「薬のもたらす副作用を最小限に抑える」ということです。
薬の「副作用」は、薬本来の目的となる「主作用」以外の作用全般を指すとされますが、薬の服用に起因してなぜ副作用が起きるのかという原因や理由は、さまざまに異なります。
また「漢方薬なら副作用もなく安全だろう」と思い込んでいる方がいますが、漢方薬でも副作用の事例が報告されているケースも、現実にあります。
一般に薬の「副作用」というものは起きないにこしたことはありませんが、医師の治療方針によっては、たとえある程度の副作用が予見できたにせよ病気を治すための「主作用」を優先して、患者の様子をみながら服用を続けるよう指示する場合もあるのです。
薬においては「副作用」=悪いこと、という固定観念を抱きがちですが、ある程度の副作用を前提として治療を行うケースもなかにはあるということです。
予期せぬ症状が起きた場合は、副作用かどうかについて自己判断をせず、きちんと担当医に相談することが必要です。
また、薬の副作用に関しては、いわゆる「飲み合わせ」の問題もあります。
「内科」と「眼科」など複数の病院に通院していて、それぞれから数種類の薬を処方されることも、珍しくありません。
このような場合、やはり飲み合わせが悪いことによって、予期せぬ相互作用が引き起こされる可能性があります。
相互作用が起きるかどうかは薬の組み合わせ次第、ケースバイケースになりますので、自己判断することは避けて、それぞれの病院の担当医に「他の病気治療のために~という薬を服用している」旨を告げ、その薬と飲みあわせて問題はないのか、あるいはどういう場合に薬の服用を中止したらよいのかを確認しておくようにしましょう。
加えて注意したいのは、普段から自分が飲んでいる他の処方薬については意識するものの、いわゆるサプリメントやOTC医薬品(医師の処方せんが無くとも、薬局で購入できる薬)や特定保健用食品(トクホ)との飲み合わせについては、比較的無関心な方が多いということです。
とりわけ特定保健用食品(トクホ)は、医薬品と同様の効果・効能をもつものもあるため、これらとの組み合わせによっては副作用を引き起こすケースもあります。
たとえば、血圧を下げる効果のあるトクホの機能性飲料などといっしょに、処方された降圧剤を服用した場合は、血圧が下がりすぎてしまう可能性があります。
このようなことを避けるためにも、薬局などで支給される「おくすり手帳」に、普段から服用している医薬品・サプリ・特定保健用食品(トクホ)などについてあわせて記入しておき、診察の段階で医師に見せるとともに、処方せんを持参した薬局の薬剤師にも見せるのがよいでしょう。
以前、別の病気で処方されたときにあわなかった薬・薬物アレルギーや副作用がみられた薬についても、そのときの状況をわかる範囲でメモに残しておくことで、自分自身が服用する薬についての情報を一元管理することもでき、一石二鳥です。
また「おくすり手帳」の所在を家族にも知らせておくことにより、急病などの緊急時においてもそれを病院に持って行くことで、適切に対応することもできます。
特に高齢者においては身体機能の一般的衰えもあり、複数の薬を常時服用している方も少なくないはずです。
一冊の「おくすり手帳」に、自分に関わる薬の情報をまとめておくことを、ふだんから心がけたいものです。
飲み薬は一般的に「食後30分以内に服用」となっているものが多いのですが、これは飲み忘れを防ぐ目的とともに、食物が胃にとどまっていることから薬物の作用が長く続くことが期待できるためです。
また、たまに薬を水無しで飲む人がいますが、薬は本来的には水分に溶けることで体内の吸収をうながし、その効果を発現するものですので、水ないし白湯と一緒に飲むようにしましょう。
お茶は薬の服用によくないという人もいますが、あまり神経質になる必要はありません。
ただし薬の服用時間については、決められた時間帯を大きくそらすとその効果が著しくそがれる、ないし効果がほとんど見られなくなる場合もあります。
たとえば糖尿病の薬などは、最大効果が発現する時間帯を踏まえて服用回数や服用時間が決められていますので、必ず指示を守るようにする必要があります。
また、一般に同じ薬を長期間服用していると、感作されて(過敏反応を起こして)薬物アレルギーを起こしやすくなるといわれます。
医師の処方薬については比較的指示を守る人でも、市販薬ではつい脇が甘くなりがちですので、自己流の方法による服用は避けるようにしましょう。
それから数は限られますが、薬を通常の食べ物や飲み物と一緒にとることについても注意しなければならない場合があります。
たとえば、高血圧の治療薬であるカルシウム拮抗剤をグレープフルーツと一緒にとると薬の作用が強まったり、ワーファリンを服用している人が納豆を食べたりするとその作用が弱まって血栓症を起こしやすくなったりすることなどは、避けるべき組み合わせとしてよく知られているところです。
また、これもほぼ常識となりつつありますが、お酒と薬の飲みあわせるは原則として禁止です。
お酒によって薬を肝臓で分解する作用が阻害されるため、一緒に服用した薬の効き目が強く出たりあるいは逆に弱まったりするからです。
治療薬・検査薬・漢方薬などを服用するにあたっての疑問点は、担当医や薬剤師に質問・相談し、服用前に解決しておくようにしましょう。
次に、「薬の使用期限」の注意点です。
医薬品には、一般に「使用期限」があります。
ドラッグストアなどで市販されている医薬品を購入した場合、まず使用期限を確認するくせを身につけるようにしましょう。
水分や湿気の少ない、通常の乾燥した室内で常温保管されていた場合は、一般に開封後から半年程度の使用が可能です。
しかし、病院でその時の症状にあわせ処方される医療用の医薬品は、時間の経過と共に成分が変質する可能性もあります。
ですからかりに薬が余ってしまった場合であっても、もったいないと無理に使い切ってしまおうとするのは止めましょう。
長期間保存しておいて別の機会に飲もうとか、あるいは家族の他の誰かに飲ませようとかするのは、絶対に止めることです。
特に他の人にそれらを服用させた場合は、副作用を引き起こすおそれもあります。
薬の破棄は、量が多くなければ可燃ごみとして捨ててしまってかまいませんが、量が多い場合は薬局に持参し、廃棄依頼をするほうがよいでしょう。
2009年6月から改正薬事法(「薬事法の一部を改正する法律」)が施行されましたが、その概要とドラッグストアやコンビニエンスストアで薬の購入を相談するときの注意点について、記しておきます。
これまで風邪薬や胃薬などの一般用医薬品(大衆薬)は、薬剤師を介してしか販売できなかったのですが、改正薬事法ではこれを特にリスクの高い「第1類」~リスクの比較的低い「第3類」の三つに分類しました。
「第1類」には、「H2ブロッカー入り胃薬」や「発毛剤」の一部などが、副作用のリスクの高い薬として分類されています。
「第2類」には副作用リスクがあるとされる「風邪薬」や「解熱鎮痛剤」などが、そして「第3類」には副作用リスクが比較的少ないものとして「ビタミン剤」や「整腸剤」などが、それぞれ分類されています。
「第1類」の医薬品は、薬剤師が必ず説明して販売(対面販売)しなくてはならない薬として、これまでは行えたインターネットによる通信販売もできなくなりました。
(ちなみに「第2類」の薬もネット販売が禁止されましたが、薬局のない離島にお住まいの方の事情などを考慮して、「二年間だけ」は販売を認める経過措置が出されています。)
そして「第2類」と「第3類」の医薬品ならば、改正薬事法で新しくつくった専門資格である「登録販売者」を店頭に置いて、彼らの説明があれば販売できるようにしたのです。
そのため2009年6月以降は、登録販売者を置いて医薬品の品揃えを多くするコンビニやスーパーが増えてくるだろう...と見込まれています。
したがって今後、コンビニやスーパーで風邪薬・ビタミン剤などの大衆薬を買うときは、わからない点をたずねる相手が薬剤師でなく、登録販売者となるケースが増えてくることを頭に入れておきたいものです。
登録販売者は、一年以上の医薬品販売の実務経験が受験資格として義務づけられるなど、必要とされる医薬品の知識を備えているはずです。
しかしなにぶんスタートしたばかりの新制度なので、上で説明したような病院の薬との「飲み合わせ」の問題などについては、説明を求めても的確な答えが得られないケースも考えられます。
納得のいく答えが得られそうにない場合は、通院する病院の担当医に先に質問するか、薬剤師を呼んで尋ねるようにしましょう。
ちなみにコンビニやスーパー側は、薬を棚に陳列するときは「第1類」~「第3類」ごとにわかりやすく分けて陳列することが義務づけられています。
したがって自分が欲しているのがどの分類の薬なのかについては、店頭で容易に判別することができます。
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